この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
幸せの欠片
第9章 クラブで
『先生』が、部屋を出て行った後、はっきりと顔が記憶にあったわけではないけれど、観客席の下にいたスーツ姿の男だと思える人が入って来た。
麻衣は、慌てて衣装を着て、身を構えた。
連続でプレイに応じるのは嫌だったし、ここでは何をされるかわからないという不安があった。
彼は、夫のことをよく知っているような口ぶりだったので、どういう関係かと尋ねると、『会社の先輩』だと言った。
「あなたは、もしかしたら、夫をここへ誘った方ですか?」
「よくわかりましたね」
「もしかしたら、と思っただけです」
「私たちが会うのは三度目なのですよ」
「え?」
「あなたは憶えておられない様子だが、結婚式にお会いしたのが最初だったのです」
「すみません。気がつかなくて……」
「二度目は、わかりますか?」
「いいえ。申し訳ないけれど、わかりません」
「そうですか……ほんの一週間ほど前、電車の中でお会いしたのですがね……」
電車の中と言われ、麻衣は戸惑った。
最近、電車の中で誰かに遭遇したという憶えもなかったし、ましてや電車の中で、スーツ姿の人は珍しくない。
その時、ハッと閃いた。
「申し上げにくいのですが……実は私、先日、デパートに行ったのですが、帰りが少し遅くなってしまって……」
「えぇ、知っていますよ。一部始終を見ていましたからね。いや、見ていたという表現は間違いかな?」
「あの時をご存知なのですね……」
「知っていますとも。私はあなたの真後ろにいたのですから」
「………!」
「驚きましたか?」
「夫が頼んだそうですね」
「正確には、一緒に相談して決めたのですがね」
「どうしてですか?」
「あなたに、そういう可能性があると思うが、被虐的なことに興味があるかどうかを知りたいと、悟がずっと悩んでいたのですよ」
「……それで、あれを仕組んだわけですね」
「あれは大変だったんですよ。7人で麻衣さんの周りを囲っていたのです」
「7人も……」
「あの後、あなたには、そういう嗜好がある、と悟に、すぐに伝えました」
あの夜から全てが始まったのだから、そう言われると納得が行った。
麻衣は、慌てて衣装を着て、身を構えた。
連続でプレイに応じるのは嫌だったし、ここでは何をされるかわからないという不安があった。
彼は、夫のことをよく知っているような口ぶりだったので、どういう関係かと尋ねると、『会社の先輩』だと言った。
「あなたは、もしかしたら、夫をここへ誘った方ですか?」
「よくわかりましたね」
「もしかしたら、と思っただけです」
「私たちが会うのは三度目なのですよ」
「え?」
「あなたは憶えておられない様子だが、結婚式にお会いしたのが最初だったのです」
「すみません。気がつかなくて……」
「二度目は、わかりますか?」
「いいえ。申し訳ないけれど、わかりません」
「そうですか……ほんの一週間ほど前、電車の中でお会いしたのですがね……」
電車の中と言われ、麻衣は戸惑った。
最近、電車の中で誰かに遭遇したという憶えもなかったし、ましてや電車の中で、スーツ姿の人は珍しくない。
その時、ハッと閃いた。
「申し上げにくいのですが……実は私、先日、デパートに行ったのですが、帰りが少し遅くなってしまって……」
「えぇ、知っていますよ。一部始終を見ていましたからね。いや、見ていたという表現は間違いかな?」
「あの時をご存知なのですね……」
「知っていますとも。私はあなたの真後ろにいたのですから」
「………!」
「驚きましたか?」
「夫が頼んだそうですね」
「正確には、一緒に相談して決めたのですがね」
「どうしてですか?」
「あなたに、そういう可能性があると思うが、被虐的なことに興味があるかどうかを知りたいと、悟がずっと悩んでいたのですよ」
「……それで、あれを仕組んだわけですね」
「あれは大変だったんですよ。7人で麻衣さんの周りを囲っていたのです」
「7人も……」
「あの後、あなたには、そういう嗜好がある、と悟に、すぐに伝えました」
あの夜から全てが始まったのだから、そう言われると納得が行った。