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Ate
第3章 ─絡まる恋心─
片付けを一段落させ、鈴葉は玄関まで玲の見送りに出ていた。ワンルームであるのだから、部屋からでも十分見送れるのに。
「わざわざごめんね。ありがとう」
鈴葉は柔らかく目を細めた。それを見て玲も小さく笑う。
「気にすんな。何かあったらいつでも呼べ」
鈴葉はうん、と頷いた。
「じゃあ帰るわ」
ヒラ、と手を振る玲の背に、鈴葉の小さな声がかかった。
「あ、っ…玲。…待って」
俯きがちな視線から発せられる声に、玲は振り返った。
「ん、どうした?」
栗色の髪の間から見える橙色の瞳は一点に玲を見詰めていた。
「…私、玲のこと好きなの。幼馴染みとしてじゃなくて…付き合いたい、って」
玲は返答が出来なかった。鈴葉のことは嫌いなわけじゃない、でも凛音だっている。
簡単に返せる答えではなかった。
「…別に答えは急がないから。玲に無理強いする気もないし」
幼い日と変わらない、人を幸せにするような優しい笑みだった。
どうして彼女達は笑えるのだろう、と玲には疑問しか浮かんでこなかった。
「じゃあ、また明日」
玲は軽く手を振る鈴葉に見送られた。