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第5章 湯殿

　脱衣所から内湯へ出た彼女は、気を張っていたためか固く感じる両肩をストンと落とした。
　心から楽しめない旅行は思っている以上に疲れてしまうようだ。


　目の前に立ちこめる湯気とその中に浮かび上がる桧の内風呂。

　彼女はじっとりと体に張り付く汗を早く流してしまいたかった。
　彼女はシャワーの蛇口をひねり、木椅子に座ると髪を洗い、ゴムでまとめ上げた。


　ふと、湯気で曇った鏡の表面に右手を滑らせる。
　手に伝わる冷たさにヒヤッっと肩をすくめ、手を鏡からシャワーの湯の中に戻した。