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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第28章 BLUE BIRD
『あは・・・ごめん、ゆぅちゃん』




マリアは少し笑って

ポロっとこぼした本音を

掻き消した





『今のナシ・・・ナシね、ごめん』





そう言って、車椅子を動かすマリアに

俺は…自分も

同じように絶望してたんだ、なんて

間違っても言えなかった





『マリア・・・ごめん』




そして俺は…自分のズルさ、弱さに負けて

堪えに堪えてた

言ってはならない一言を

ついにマリアに言っていた




そして、マリアは




『それも・・・ナシ』





マリアは……やっぱり

笑いながら頬を膨らませて

俺の一言を否定した






『もう・・・言わないで、お願い』






『うん・・・。ごめん・・・、……ぁ』






『ふふふっ・・・』






『~~・・・』






『ゆぅちゃん・・・?』





くるっ…っと振り向いた

マリアの……いつもの表情

いつもの、クリっとした

薄茶色の瞳が…俺をとらえた





『うん…?』





『あの日の・・・ゆぅちゃんの気持ちは』






ドキッ・・・って言うか

ギクッとした







『あの時の、ゆぅちゃんの気持ち

私には…十分に伝わっているから』




『っ・・・』





『ゆぅちゃんが…どんな気持ちで

どれ程の想いで…来てくれて

私のために、あそこまでしてくれたのか

そんな…ゆぅちゃんの気持ちが

私には…十分に伝わっているから』






『っ・・・っ、ぅ』






『だから・・・これは綺麗事じゃなくて

私、ゆぅちゃんに感謝の気持ちを持ってる

逆を言えば……それしか、ないの』






『マリ・・・ア』







『ありがとう・・・』







俺はマリアの車椅子の後ろに隠れて

しゃがみこんで目を覆った






『あなたは・・・本気で

それも…自分が大変な時に

自分の事も、ろくに省みずに

私のために・・・ただそのために

本気で私を……助けようとしてくれた』






『マリア・・・っ、もう』




もう・・・勘弁してくれ

許してくれよ






『だから・・・あなたが謝る道理は

どこにもないのデス・・・♪

それが・・・紛れもない私の気持ちデス』
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