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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第28章 BLUE BIRD
マリアのお父さんは
常に…声を荒げるでもなく
淡々と…おっとりとした口調で話す
変な言い方だが
内容によっちゃ、それが
逆にこわいくらいに…温厚な
『和樹くん……私達はね
マリアが電話をよこした時
最初は…その申し出を
断ったんだよ』
『え?…』
『家を出て10年…泣き言ひとつ
弱音のひとつも吐いたことのない娘が
初めて親に
助けを求めて来たと言うのに』
『……』
『事が事だから、落ち込んで
それはそれは動転して…と
初めてながら親を頼ろうとした
それは当然だと思ったよ
だけど、考えも…考えても
何かがおかしい
それを親の勘と言うのだがね
まりあを…問い詰めた
もちろん…話してくれないが
ろくに音沙汰もなかった
結婚してからの数年間も
連絡がないのは無事な証拠…
我々はそう言い聞かせて
娘が…本当に辛いときは
必ず打ち明けてくれる、と
いつか話してくれると
信じて待つことしか出来なかった』
『……、…』
『そんな娘の…長年の沈黙をね
聞き出すには、今しかないと思った
それで…
「話さないなら迎えには行かない」
と、まりあに…
「帰ったら話すから迎えに来てくれ」
と…泣いて頼む、まりあを…はねつけた』
〃そんな・・・ことが〃
俺は絶句していた
『そうしたらね…マリアは
病院を経由して、自分の手荷物を
私達に送りつけてきてね』
『え……』
『何てことない…カバンがひとつ
ただ入った小包がね
いや、これには参ったね…なんて
妻と笑ってしまって
もう実家に帰る気でいる
とにかく辛いから
何がなんでも迎えに来てくれっていう
無言の娘からの訴えかな?なんてね
これは親が折れて
仕方がない、もう迎えに行こう
なんて思って…
届いたカバンを開けてたらね』
ゴソ・・・
『こんなものが…出てきたんだよ』
『……?』
マリアのお父さんが
ジャケットの内ポケットから取り出したのは
『・・・っ』
〃・・・!?〃
俺にも見覚えのある
黒い手帳
マリアの・・・あの日記
常に…声を荒げるでもなく
淡々と…おっとりとした口調で話す
変な言い方だが
内容によっちゃ、それが
逆にこわいくらいに…温厚な
『和樹くん……私達はね
マリアが電話をよこした時
最初は…その申し出を
断ったんだよ』
『え?…』
『家を出て10年…泣き言ひとつ
弱音のひとつも吐いたことのない娘が
初めて親に
助けを求めて来たと言うのに』
『……』
『事が事だから、落ち込んで
それはそれは動転して…と
初めてながら親を頼ろうとした
それは当然だと思ったよ
だけど、考えも…考えても
何かがおかしい
それを親の勘と言うのだがね
まりあを…問い詰めた
もちろん…話してくれないが
ろくに音沙汰もなかった
結婚してからの数年間も
連絡がないのは無事な証拠…
我々はそう言い聞かせて
娘が…本当に辛いときは
必ず打ち明けてくれる、と
いつか話してくれると
信じて待つことしか出来なかった』
『……、…』
『そんな娘の…長年の沈黙をね
聞き出すには、今しかないと思った
それで…
「話さないなら迎えには行かない」
と、まりあに…
「帰ったら話すから迎えに来てくれ」
と…泣いて頼む、まりあを…はねつけた』
〃そんな・・・ことが〃
俺は絶句していた
『そうしたらね…マリアは
病院を経由して、自分の手荷物を
私達に送りつけてきてね』
『え……』
『何てことない…カバンがひとつ
ただ入った小包がね
いや、これには参ったね…なんて
妻と笑ってしまって
もう実家に帰る気でいる
とにかく辛いから
何がなんでも迎えに来てくれっていう
無言の娘からの訴えかな?なんてね
これは親が折れて
仕方がない、もう迎えに行こう
なんて思って…
届いたカバンを開けてたらね』
ゴソ・・・
『こんなものが…出てきたんだよ』
『……?』
マリアのお父さんが
ジャケットの内ポケットから取り出したのは
『・・・っ』
〃・・・!?〃
俺にも見覚えのある
黒い手帳
マリアの・・・あの日記