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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第30章 翼を・・・ひろげて
『っ・・・』





『マリア・・・っ!!!』













1秒・・・たった一瞬さえも

息を吸うのも・・・まばたきさえも

待てないかのように



駆け寄り

その姿に・・・触れて

抱きしめた









『マリアっ・・・マリア・・・っ』






『~~~~っ』










『マリアっ・・・マリアだよなぁ・・・っ

ほんとに・・・・・・マリア・・・っ』






『・・・っ・・・どうしてここに?・・・


なんで・・・・・・ゆぅちゃんが・・・』









抱きしめ合う腕の力・・・手のぬくもりが

その女性(ひと)がそこにいる事を

お互いを・・・・・・実感させた












『マリ・・・アぁ・・・』




『ゆぅ・・・、・・・っ・・・~』









それ以上の言葉が…

何一つ言葉が出てこなくて

まるで磁石が引き合うかのように

ひたすらにお互いの唇を重ねた








そんな俺たちを

舞い上がる無数の花びらたちが

やわらかに…包み込んで隠してくれる








リンゴーン・・・リーンゴーン・・・リンゴーン






近くの教会から鳴り響く

鐘の音色に揺られて





風に揺られ舞い上がる花びらは


暖かい季節が俺たちに授けてくれた


薄紅色の


幸福を願う


止まないフラワーシャワー・・・








『マリア・・・』





『・・・ゆぅちゃぁん・・・っ』











言葉の代わりに

お互いの目から

無数の涙が溢れ出していた








『どうして・・・?』


『・・・ここに?』






『『・・・』』





動揺…興奮…?


会話の噛み合わない俺たちは


その場で向かい合う






『・・・よかった。それ・・・探してたの』



『・・・』






マリアの視線が向くのは
俺の右手

手からはみ出してる
細いチェーン




『・・・まさか

あなたに・・・届けてもらうなんてね』



『・・・』







言葉が出ない






言葉は・・・・・・いらない









俺はマリアの差し出す〃その場所〃に

指輪を・・・そっとつけた








リンゴーン・・・リンゴーン

鐘の音と共に
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