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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第17章 翼を・・・ください
俺の一言で・・・

処置をしてた救急隊員も

病院に連絡してたであろう隊員も

ピタリと・・・硬直したように止まり



一瞬…その場がシーンと

静寂に包まれた








「え・・・」



『彼女は・・・妊婦です』







俺に怒鳴り付けられて

うろたえながら通報したミユが

知り得ない情報・・・






ただ…人〃一人〃が

転んだとか…ぶつけたとかいう事とは

当然、話が変わってくる・・・










ジャリ…っ




同時に、俺の背後で
アスファルトに擦れる足音がした



振り向く余裕も、振り向く気もないが



ミユが動揺したそれだとわかる。








「通っている産婦人科わかりますか?」


『ぇと…』




場がシンとしたのは、また一瞬で
隊員達はすぐに対応を始める





「今、何周かわかりますか?」




電話している隊員が次々に
俺に情報を求めてきた





『すみません…っ、ちょっと』





頭の回らない俺は
マリアからはなれて無我夢中で
アパートの階段を駆け登った




靴のまま自分の家に上がり込み
部屋にあったマリアのバックを
鷲掴みにしてすぐに戻る







『すみません…!これ・・・』




俺はマリアのバックを
メチャクチャにあさって

取り出した母子手帳を
救急隊員に渡した




手帳の中身をみた隊員が電話で
病院に情報を伝えている




なに…やってんだよ



早く・・・はやく運んでくれよ



目を固く閉じて
必死に呼吸してるマリアと

忙しなく動く救急隊員を
交互に見ながら

俺はせかせかしていた



『マリア…しっかり』



そんな俺の背後で・・・




『…そんな・・・あたし・・・あたし』




うろたえにうろたえてたミユが
その事実に更にうろたえ
ガタガタ震えて立っていた




うろたえる気持ちわかるぜる
マリアを見たって…わかんねぇからな

細身の…まだお腹も出てないその身体に…

マリアが守ってる
〃大事なもん〃があるなんて

誰も思わねぇよ…



暴走しても発狂しても
それを知ってたらせめて
ここまではやらなかったかもな?
同じ女なら尚更な…



だからって・・・テメェは









『自分が何やったかわかってんのかっ…!!?』
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