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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第17章 翼を・・・ください
『・・・っ』


『そういう訳だから、今回は…』



数時間…経っただろうか

マリアの病室の前…
半開きのドアの向こうから


目を覚ましたであろうマリアと
説明している旦那の声が
少しずつ、聞こえてくる





俺は…病室の前で立っていた

無条件で付いてきた、というような
ミユと並んで






『・・・』


『費用は全て賄えるらしいから
心配はいらない。

役所の届け出も…週明けにはしておく
手続きはこっちで全てやっておくから。

子宮の収縮が収まって落ち着けば
退院出来るから、それまでは休んでいろ』






マリアが質問してるって様子ではない

旦那が…医者から説明受けたりしたことを
ただ一方的に淡々と話している



こんな時に…言わなくたって

そう思うのは俺だけか…?



さりげに聞こえた届け出・・・って言葉

それは…マリアの中から
大事なものがいなくなった


すでに、そこにいない…
その事実を色濃く浮き彫りにする。





そんな…事務的に
淡々とこなすことではないだろう?



別居してたから…?


それとも…敢えて?


自分は気丈に振る舞おう…そういうつもりなのか



この人も・・・〃自分の子〃を亡くした


その事実は同じなのに…










『うっ…うっ…うっ・・・~~~~~』






夫の言葉の数々に

その〃現実〃を知ったマリアから

泣き声が聞こえてくる







『うっ…うっ…うああぁぁあぁああぁんっ』







・・・・・・。








『いやぁぁあぁぁぁっ…!いやだぁぁあぁっ』









自分の心臓を
突き刺されてるような気持ちになる…



おそらく旦那も気付いていない
半開きの病室のドアのせいもあってか…



マリアの泣き声は廊下中に響き渡る



ギュウ・・・



あまりに悲痛なその声に


俺のどこかが音を立てるように
締め付けられて…俺は手で目頭を被う





泣き声・・・通り越して

マリアの声は〃悲鳴〃だった



ワー…とか、ギャー…っていうのに程近い


理屈ではない
痛み、悲しみ、感情…すべてが

入り交じり…一体となって
自制も何も全くきかない

からだとこころ・・・

そのすべてから湧き出る

マリアの哀しみ・・・




なのに・・・
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