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甘美な吸血〜貴方の餌になりたい〜
第2章 満月の夜に
でも、何だかその光景から目が離せなくて、私はその場でジッとその様子を見つめていた。
後ろ姿だけのその人は、すごく長身で黒くてタイトなスーツ姿をしている。
少し長めのグレーの髪が、汐風に優しくなびいていた。
大きく広げた両手の上を、相変わらずコウモリがバサバサと舞っている。
そんな奇妙な光景に、私はいつの間にか魅了されていたのだった。
不思議…。
もう怖いと思わない。
寧ろ月に照らされた、その人とコウモリの光景が、すごく綺麗に見える。
この光景を残したい!
そう思って、首から下げていたカメラに手を伸ばした瞬間、後ろ姿だった人が、こちらを振り返った。