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行こうぜ、相棒
第6章 Englishman In New York









胸に薔薇の花束を抱えて、舞台の千秋楽を終えた『先生』の楽屋に行ったのは、それから半月ほど後の話だ。
リエに付き添われて、紺色ののれんのかかった先生の楽屋にエリは入った。

初めまして、妹がお世話になっています。
本当によく似たお姉さんですね。
おきまりの挨拶を交わしながら、先ほどまで舞台で見ていたのと全く違う人物であるその『先生』にエリは驚いていた。

舞台は英国の執事の物語だった。
先生は主人公である若い執事を躾ける、年老いた名執事の役を演じていた。
枯れた声、撫で付けにした髪、そして伸びた背筋。先生の存在感は、アイドル俳優の主人公のオーラに消されることなく、際立っていた。
だが、楽屋での先生はスイッチを切るようにその雰囲気を消し去り、リラックスした初老の日本人の男性に戻っていた。舞台にいる時より、はるかに小柄に見えた。

「リエさんはとても優秀な生徒さんなんですよ」と、彼はエリに言った。「私の俳優養成ワークショップの自慢の生徒です」
やめてください、とリエが照れ笑いを浮かべるなか、先生はエリに続けた。



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