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第8章 過去

別にリナと無理矢理にやりたいとか俺は思ってはいない。ただ俺はリナのそういう可愛い顔が見たかっただけだった。

『ダメだって言ったらリナはヤラセてくれんのか？』

そうやって俺はリナをからかって遊んでやる。リナはますます、焦った顔になり

『アルト～…。』

と可愛く俺にしがみつく。リナの頬にキスして

『そうやってお前が可愛いから好きなんだ。』

と俺が言ってやるとリナは笑顔に変わり

『じゃあ、今日は晴れたから洗濯済ませちゃう。』

とパジャマではなく普通の服に着替えて洗濯を始めていた。

リナの言う通り今朝は久しぶりに雨が上がっていた。洗濯を済ませたリナと朝昼兼用の飯をファミレスに食いに出かけた。

帰りは駅前で色々と食い物を買い、コンビニで俺のビールとリナのプリンを買って帰る。コンビニのバイトの男はリナが彼氏がいると言ってからしばらくするとコンビニから居なくなったとリナが言っていた。

夕方にはまた雨が降り出した。傘が嫌いな俺にリナが無理矢理に自分の傘の中へ俺を入れようとする。休日だから駅前の焼き鳥屋に向かっていた。

２人でふざけながら雨の中を歩く。リナが

『少しは雨が好きになれそう？』

と聞いて来るから俺は

『雨だけは絶対に嫌いなんだ。』

と笑っていた。焼き鳥屋じゃ宗司が

『随分、機嫌が良くなったみたいですね？』

と俺に聞いて来る。俺は

『今日は一応貯まった洗濯が出来たからな。』

と機嫌がいい理由を誤魔化していた。雨の音はあの日を思い出させるから嫌いだ。だけど今はリナがその音を俺に聞こえないようにして来るから俺は機嫌がいいだけだ。

それを宗司達に知られたくない俺の為にリナも余計な事は何も言わない。ただ雄太が

『次の訓練日は隊長をこてんぱんにしてやる！』

と言った時にリナが

『アルトは誰にも絶対に負けない。だから次はまた雄太の奢りだよ。』

と何故か俺の代わりに雄太と賭けていやがった。俺は宗司に

『雄太に負けたら俺は不甲斐ない男としてリナに捨てられるらしい。』

と笑っていた。宗司は

『そういう緊張感を人はどこか必要なんですよ。』

とやはり俺に笑っていた。