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堕天使 1st gig.
第35章 嘘
だが、それは間違いなく、俺が出会った頃の幼い顔のリナの写真であり、俺が確認する為に本棚から出した他のアルバムの写真も全てが俺が今までに見て来たリナの顔をした少女が写る写真ばかりのアルバムだった。

友達とふざけて撮ったような写真、弁当を食べているような写真、モデルの真似をして少し照れた顔をしている写真、全てが市ノ瀬 理菜であり、全てがリナだという写真に向かって俺は

『彼氏なんかいねぇんだな。』

とくだらない事で笑っていた。本当は泣きそうな気分になっていた。大戦前に死んだ少女が今は俺の前に生きて存在しているとか、そうやって笑っていないと俺の悪い頭はパニックで限界だと叫んでいた。

とりあえず、俺は自分に落ち着けと言い聞かせ、もう1度写真を確認していた。穏やかな笑顔の銀髪、碧眼の女性は市ノ瀬 理菜の母親だ。明らかに外国人という彫りの深い顔立ちの綺麗な理菜によく似た女性だった。

同じ銀髪、碧眼でも理菜は小ぶりの鼻に薄い唇で、その辺りは父親の市ノ瀬 真一に似たんだという事だけがわかった。

後は、色々と調べてはみたが、理菜がかなり頭が良い子で学校の成績がかなり優秀だったという程度しか俺はわからないまま、その部屋を出ていた。

1階で俺を待っていた五十嵐と宗司が

『多分、10年以上、この家を使っていない感じだ。冷蔵庫にとんでもない日付けの恐ろしい食材がゴロゴロしてた。』

と言って来た。俺が

『手がかりは無しか?』

と聞くと五十嵐はあるカードキーを俺に見せて

『一応、手がかりはあるがこいつを調べるにはまた少し時間が必要だ。』

と言っていた。市ノ瀬の家を出るともう日が暮れていた。俺は五十嵐と宗司を車に乗せて自分達の街に向かって走らせていた。

宗司と五十嵐を各自の家まで送ってから俺は家に帰っていた。美優はもう寝てしまっていたが不安な顔のリナが

『ご飯食べるよね?』

と俺に聞いて来た。俺はリナを抱えてキスしてから

『食べるよ。』

とだけ答えていた。リナはずっと俺から離れようとはせず、俺はずっと頭の隅から離れない理菜をリナと重ねてしまっていた。
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