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堕天使 1st gig.
第35章 嘘
不安な顔で俺にしがみつくリナが

『アルト…。』

と泣きそうな顔をするから俺は出来るだけ笑って

『最近、飯美味くなったな。』

とくだらない事を言っていた。リナが少しだけ嬉しそうな顔に変わり

『美優に怒られたくないからね。』

と笑っていた。俺はそうやって頭でっかちで頑張り屋でいつも我慢と努力するリナしか知らない。でも、それがリナで俺が好きな女で俺が守りたい女だから、俺の中ではもうそれ以外のリナを知る必要ないという気分になっていた。

『そういうお前を愛してる。』

たったそれだけを俺が伝えてやるとたったそれだけの為に頑張るリナだから

『愛してる。』

と俺にキスを求めて来る。もう子供のリナではなく、大人のリナだから、リナは市ノ瀬 理菜ではないんだと俺は自分に言い聞かせるだけだった。

翌日の焼き鳥屋は忘年会、涼宮も家族と参加し、宗司は彩華さんと参加していた。ハヤトは羽賀を連れて来て何故か小雪に

『自分の分は自分で払いなさいよ。』

とハヤトが言われていた。そうやって皆が集まる中で、五十嵐がリナに

『ちょっと仕事で旦那を借りるかもしれんが協力してくれな。』

と言っていた。正直、俺はこの五十嵐の言葉にホッとしていた。俺は嘘が下手でリナに仕事だと嘘をつき続ける自信など微塵もなかったからだった。

五十嵐と会うとだけ言えば勝手にリナが仕事だと思ってくれる状況に誘導してくれる五十嵐に俺は感謝しつつも恐ろしいとか思っていた。

昨日の休暇にやはり五十嵐が不在でリナとは違う意味で不機嫌だった小雪が五十嵐に

『でも、うちの隊長に情報部の仕事なんか手伝えるの?』

と聞いていた。五十嵐は

『野生の勘って奴はなかなか侮れんぞ。』

と見事に小雪の攻撃をかわしていた。こういう言葉遊び的な会話は五十嵐は器用なんだと不器用で嘘が下手な俺は五十嵐が羨ましいとか思っていた。

ただリナはニコニコと五十嵐や小雪の話しを聞いているだけで機嫌がいいように俺には見えていた。

休暇明けは新年に向けて俺は訓練兵の評価を付ける仕事や今年は明石を対テロに引き抜く段取りを宗司とやっているだけだった。
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