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堕天使 1st gig.
第36章 未来へ
記憶を失ったとしても遺伝情報から本能として受け継いだ部分は消えないという事か…

そう俺は考えていた。リナは自分が甘党だという事は忘れている。だが、甘党であるという体質は変わっていないから俺と出会い初めて欲しがった食べ物がプリンだったのだと納得がいく。

理菜の部屋は白が多く見られた。今もリナは白い家具などを好みにしている。

つまり基本は何も変わらず、リナが理菜だという事実を忘れているだけなのか?いや、理菜は大戦前に死亡している。

だとすれば、理菜の基本の遺伝情報を与えた新たなクローンがリナなのか?

そうやって恐怖を感じたまま、俺は日記を先へと進めていた。中学に入り、理菜はやはり優秀な子で成績は常に上位だったと書かれていた。

高校に進学し、市ノ瀬の心配は理菜の恋愛に関してだったが理菜が

「私はお父さんみたいな科学者になりたいの。」

と言ったから市ノ瀬は少し安心したと日記に記していた。理菜は友人も多く、誰からも好かれる子だと市ノ瀬は理菜に溺愛を続け、日記は理菜を褒め称える文面が多かった。

実際、理菜は科学者になりたいと言う言葉通りに夏休みの自由研究に様々なDNA情報を採取した標本を作り、科学発表会などでも表彰を受けるほど優秀な子だと記されていた。

もし、記憶があるリナだったたら俺なんか相手にされなかったかも…

と少し俺は凹んでいた。

だが、その少し後の日記から俺は

やばい…

と感じていた。高校2年の秋、理菜が17歳で事故に合ったのだった。

「医者は理菜が死んだと言った。理菜の脳に活動信号が消えたからだ。今は機械で理菜の呼吸を促しているが機械を止めれば理菜は完全に死んでしまう。しかも、この馬鹿な医者は理菜の臓器を提供しろとか言い出した。冗談じゃない。理菜はまだ死んではいない。私が必ず理菜を救ってみせるから。」

と市ノ瀬の狂気が始まっていた。

いわゆる脳死って奴か?

頭が悪い俺にはよくわからないが明らかに市ノ瀬の考え方が歪んでいるのだけが理解出来る。マリアを亡くし、そのマリアに似た理菜だけは絶対に亡くす事が出来ないという市ノ瀬の気持ちは理解出来るが、文面の異常さに俺は先に進むのを少し躊躇っていた。
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