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ぼでぃ・ぴろぅ
第1章 1
「えっとね、これ」
半分近く食べ散らかした弁当箱の中にメインとして鎮座する春巻きを白パール色の長い爪で指さして、口を開けた。
2等分された春巻きの半分は無事、胃の中に収まった。けど、好物だからもうひと欠片は楽しみに残しておいたのに…
これじゃあ、カツアゲも同然だ。春巻きを泣く泣く箸で掴み上げて、多仲さんの口へと放り込んだ。
オレの二の腕の真横でもぐもぐしている。
「美味しい!岩しげのお母さんて料理上手なんだね」
人は旨いものを食べると表情が明るくなる。ギャルということを忘れるほどの愛くるしい良い笑顔だ。オレも家族が褒められて悪い気はしない。
「ええ、まぁ」
喜んでもらえて嬉しくて、つい笑顔で返してしまった。
「明日も1コ貰っていい?」
は?それって明日も膝抱っこ確定っすか?
夏休み突入まであと一週間。土日を除いて数回辛抱すれば開放される。
「いいですよ」
オレは面と向かって嫌と言えないヘタレだ。
こうして『抱き枕』というしもべに成り下がった。