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第14章 修羅道

次の瞬間、物凄い立ち眩みが僕を襲った。
思わず彼女から身を離す。
鼻の穴の奥に針を刺されたようなするどい痛みが顔の中心を占める。
足の裏が地面に縫い付けられたように重い。

『ごめんなさい…ごめんなさい…』

彼女はそんな僕をくしゃくしゃの泣き顔で見ていた。

僕は藁の上に尻餅をつく。
力が抜けて行く様だ。

『何……した…の…？』

舌が痺れて呂律がまわらない。

『私の事、忘れないで…お願いよ』

僕の目蓋は重みに耐えきれなくなった。
何度も何度も上目蓋と下目蓋がぶつかり合う。

『な……に…………し…………』

『ごめんなさい…ごめんなさいッ！』

泣きじゃくる顔が僕を見下ろしている。
頭を持ち上げていられない。
駄目だ…僕は側頭部から藁の山に倒れこむ。

霞む視界の中、愛しくて怖くて大好きな真理子さんがいた。

目蓋はやがて痙攣しはじめた。意識が遠くなり、丸い穴から覗き見ているような狭い視界となる。

『…さようなら、ノブ』

駄目だ。落ちる。
僕は意識を失った。
眠るようにして。