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第15章 畜生道

途中でぬかるみにはまり、僕は前のめりに転んだ。
そして脚を大きくＶサインさせながら前転する。

鋭い傾斜を僕は転げ落ちていった。
岩が竹が何度も僕の身体を打ち付ける。
口の中が鉄の味がした。
切れたみたいだ。

意識が遠退きそうになった時、僕は無惨に竹林下の水田へと顔から落ちた。

再び吐いて顔を上げると、懐中電灯を当てられた。
僕はその光から右手で逃れた。

『信人ぐん？』

聞き慣れた声、一郎さんが驚いた顔で僕を見ている。

僕は水田の中、カエルみたいに後ずさった。
全身に茶色い泥が分厚く張り付き冷たい。

『信人ぐんだっぺばな？』

一郎さんが近付いてくる。
僕の歯はガチガチと音をたて始めた。
口の中いっぱいに鉄分の味と、その独特な臭いが広がる。

ドーン…ドーン…と太鼓囃子が遠くで聞こえる中、僕と一郎さんは見つめ合っていた。

一郎さんが長靴の脚を大股にし、水田へと入って来た。

僕はガタガタ震えながら後ずさる。

『…ぞっかぁ…宗二義兄さんが話したんだな』

一郎さんは1人で納得したように頷いてから僕の前にしゃがみこんだ。

『…お…お…おね…おねおね…』

口が恐怖で回らない。
情けないくらいに僕は震えていた。

『…おね…お願……い……い…いぃ…です…か……ら………殺さ…な………い…で』

やっと言えた。