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鬼ヶ瀬塚村
第19章 あの日
『僕はここを受け入れるよ…少しづつ』

『素直じゃない?』

『まだ死にたくないしね』

そうだ。
僕も人の命を奪ったんだから…この村に相応しいのかもしれない。

………

『ノブ、ノブ、ノブッ!3ヶ月だって!』

真理子さんが僕の背中で嬉しそうに言った。
僕は机に向かって漫画をガリガリ描き、返事すらしなかった。

『ねぇ、聞いてるぅ?3ヶ月だよ?3ヶ月ッ!』

『漫画の締め切りが?…いいね、真理子さんは余裕があって』

僕は残り4日しかない締め切りに必死だった。
大学4年の春、僕はろくに就職活動もせず相変わらずアパートで漫画を描くかセックスするかだった。

真理子さんは卒業してからプロの漫画家として少女漫画に短編物を描いたり、ホラー漫画の連載を始めていた。
時に空いた時間で近所のファミレスでアルバイトする彼女、その作品のどれもはヒットし連載雑誌を真ん中で開いた右側のページの束に印刷される事がほとんどだ。
人気があったり注目がある作品はだいたいが最初のページに印刷される。
人気があまりない作品は後ろのページに印刷される事が大半だ。

『そんなわけないでしょ?あのね、ノブ、ノブッ!私、今日病院に行ってきたのよ』

『へぇ』

適当に返事しながら僕は手を止める事はなかった。
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