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鬼ヶ瀬塚村
第21章 掟の教え
僕は僕に秘密を喋った宗二さんへの咎めについて訊いた。
真理子さんは一瞬目を伏せ、悲しそうな顔をしたがすぐに目線をグッと持ち上げ僕を見た。
『掟だからね』
『…そうなんだ』
『ノブも掟なんかで死にたくなければ私と結婚しなくて良いわよ』
『………』
『カヤばあちゃんみたいにボケたフリもいいけど、私演技力無いもの』
真理子さんは言うと、再び階段を降りていった。
愛するが故に夫婦になれない。
掟が女と男を縛って夫婦にさせる。
宗二さんは弘子さんに食べられる事が怖く無いのだろうか。
『いずれ、人は死ぬよね…』
僕は呟き、無言で階段を降りる彼女に続いた。
やがて暗い畦道沿いに出た。
街灯が点々と並んでいるが、民家の明かりもほとんどなく暗闇だった。
『ノブ』
真理子さんが背中を向けたまま僕の名前を呼んだ。
『何?』
『少しずつって自分でも言ってたじゃない?少しずつ村を知っていってくれたら良いわ』
『…うん』
この新しい居場所で僕は常識から逸脱した彼らの常識を学ぶのだ。
殺人を隠蔽し、得た報酬で村を豊かにし、そして神を崇め恐れ、死者の魂を空へと送る。
江戸時代から続くそれを部外者である僕も受け継ぐのだ。命は人生となり、人生は誰かの人生を繋げる。時に誰かの人生すら作ってしまう。
無意識であっても。
一番最初に人間の肉を食べた人物から数百年の時を経て、今僕に繋がってるんだ。
真理子さんは一瞬目を伏せ、悲しそうな顔をしたがすぐに目線をグッと持ち上げ僕を見た。
『掟だからね』
『…そうなんだ』
『ノブも掟なんかで死にたくなければ私と結婚しなくて良いわよ』
『………』
『カヤばあちゃんみたいにボケたフリもいいけど、私演技力無いもの』
真理子さんは言うと、再び階段を降りていった。
愛するが故に夫婦になれない。
掟が女と男を縛って夫婦にさせる。
宗二さんは弘子さんに食べられる事が怖く無いのだろうか。
『いずれ、人は死ぬよね…』
僕は呟き、無言で階段を降りる彼女に続いた。
やがて暗い畦道沿いに出た。
街灯が点々と並んでいるが、民家の明かりもほとんどなく暗闇だった。
『ノブ』
真理子さんが背中を向けたまま僕の名前を呼んだ。
『何?』
『少しずつって自分でも言ってたじゃない?少しずつ村を知っていってくれたら良いわ』
『…うん』
この新しい居場所で僕は常識から逸脱した彼らの常識を学ぶのだ。
殺人を隠蔽し、得た報酬で村を豊かにし、そして神を崇め恐れ、死者の魂を空へと送る。
江戸時代から続くそれを部外者である僕も受け継ぐのだ。命は人生となり、人生は誰かの人生を繋げる。時に誰かの人生すら作ってしまう。
無意識であっても。
一番最初に人間の肉を食べた人物から数百年の時を経て、今僕に繋がってるんだ。