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鬼ヶ瀬塚村
第28章 横山総合診療所
『そうなんだ』

僕は思った。
あの裏庭でカシャカシャと涼やかに回っていた風車の数だけ死体が運ばれたのだと。

『いっぱいになっだら撤去じで御焚き上げじで…また1から作っでは並べるんだっぺよ』

優子は言いながら手元で小さな風車をこしらえていく。

『今夜は鬼神祭だがらよ、早めに作っでるんだ』

『鬼神祭?今日やるの?』

『んだよ、シュケズールが一杯だって姉ぢゃんが言うでだっぺよ。ん…?スケズール?…シュケジュール?…?』

明日の夕刻には宗二さんの御咎め式だ…村は忙しくなる。
なるべく早くに事を片付けたいのだろう。

『ノブ、おめ泥まみれじゃねぇが?風呂入っでごいよ?』

優子が鼻を摘みながら言う。
確かに全身汗臭く、砂や石炭や泥まみれだ。
東京ではこんな姿になった事は一度も無かった。

『そうだね…じゃあ、少し入ろうかな…あ、ねぇ優子?』

『なんだっぺ?混浴じでぇなら100円ぐれ』

『違うよ…達弘さんって…』

そこまで言いかけて僕は止めた。
他人のプライベートをベラベラ喋る性分では無かったし、彼の涙を見て何も言えなくなってしまったのだ。

昔はとんでもない悪だった達弘さん、人目もはばからず号泣するのは深い理由がある筈だ。
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