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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
重い鉛を着けた様な足取りで荒岩家の玄関にたどり着く。

居間に入ると、弘子さん、邦子さん、達弘さん、紗江さん、和幸、カヤさんが無言でちゃぶ台を囲っていた。

僕と真理子さんと吾郎さんがそれぞれ座ると、弘子さんが真理子さんに訪ねた。

『真理子、報告してちょうだい?…一郎は…あの子は何故死んだの?』

『いっちゃんは…』

真理子さんの言葉の続きを皆一様に待っているようだった。

真理子さんは続けた。

『自殺だって…』

邦子さんが"はあぁぁ…"と深い溜め息をついて畳に吸い込まれるんじゃないかというくらい小さく縮こまった。
カヤさんは一瞬だけピクッと動いて反応した。

『自殺…ですか』

弘子さんがちゃぶ台の上でギュッと手を握った。

『な…なじでじゃッ!?なじで死んだんじゃッ!!』

紗江さんがウワァッとちゃぶ台に顔を伏せて泣き出した。
尋常ではない号泣に背中におぶられた和幸が不機嫌そうにグズり始めた。

『なんでじゃあ…なんでじゃあ…』

『紗江さん、仕方がないのよ』

悲しみに暮れる紗江さんに弘子さんが優しく言った。

『もし、自殺なら…皆さん何か心当たりはありましたか?…例えば悩んでいる様子を見掛けただとか…』
弘子さんが一同を見回す。
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