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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
再び静寂が執拗に訪れた。

『ぞの必要はねぇっぺ』

不意に達弘さんがポツリと告げた。
一同一斉に彼を見上げる。

彼は無表情のまま続けた。

『あいづは他殺だ』

『は…?』

真理子さんが眉根を歪ませた。

『どうしてあんたが知ってるのよ?先生は自殺だって………』

『俺が殺じだがらだ』

真理子さんが言い終わる前に、重ねるようにして達弘さんが言い放った。

えッ?
殺し…た…?

僕は達弘さんを見つめた。

彼は清々しそうな笑みを浮かべていた。

『い…今、聞き間違えじゃなければ…あんたが…あんたが…いっちゃんを殺したって………聞こえたんだけれど?』

真理子さんは苦笑いを浮かべながら達弘さんに身を乗り出していた。

『聞ぎ間違えじゃねぇ、俺が殺じだ』

『………こんな時に悪ふざけな冗談はやめなさい』

弘子さんがちゃぶ台を叩いて言う。
しかし達弘さんは首を軽く横に振り、ゆっくりと言った。

『俺が昨日、一郎のおっちゃんをごの手で殺じだんだ。だから太鼓ば間に合わねがっだんだ』

『…………』

静寂が沈黙が居間を包みこむ。

『じょ…冗談が過ぎるぞッ!』

吾郎さんが達弘さんの胸ぐらを掴み上げて怒鳴った。
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