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第34章 ５人のマタギ

『じぃさんや…づげもん…』

カヤさんがブツブツ言うと、彼は沢庵を小さく千切りカヤさんの口元に運ぶ。

『時刻は6時よ、いつも通り愚の猪の狩り場で行うわ。参加するしないわ自由よ』

『オレは見にいくぞ、父ちゃんの晴れ舞台だがんな』

優子は白米を口に流し込みながら平然と言う。

『あんたは早く学校へ行きなさいよ、今日は集会でしょ？』

『でも、授業はないっぺよ』

『そりゃ聖狩りだもん、授業はないわよ。典子、後は良いからあんたも行く用意なさい』

真理子さんに言われて一瞬典子ちゃんはビクッと身体を震わせた。

『皿だげ…洗ったら…い…行ぎます』

典子ちゃんが俯きながら言う。

『僕がやるから、行っておいでよ』

僕が言うと典子ちゃんの顔は相変わらず茹で蛸のように赤くなっていく。
それを見て真理子さんはニヤニヤしていた。

『おし、典子行くぞッ！』

優子が元気よく立ち上がる。
典子ちゃんは"ご…ご…ご馳走様…でした…"と合掌していた。

セーラー服姿の2人は玄関へと駆け出していく。
しばらくして庭先から2人の後ろ姿が見えてきた。
ショートカットの優子と長い三つ編みの典子ちゃん。

経緯はどうであれ、典子ちゃんがやっと普通に暮らせるようになったようで僕はとても安心した。