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鬼ヶ瀬塚村
第1章 起承転結"起"
真理子さんはいつも彼らの話は聞かせてくれても、どういう人物か具体的には教えてくれなかった。

職業や年齢をなんとなく聞かせてくれる程度だったし、それも全部僕が懸命に聞き出した情報だ。

誰だって恋人の家族に興味があるだろう?

『来週には支度済ませて行かないと…ノブ、仕事はどれくらいたまってる?』

たまる程ないくせに僕は

『んー…3件ほどかな』

と笑顔を見せる。

たまる程ないくせに

『でもパパッとやってすぐ終わりだよ』

と笑顔を見せる。

たまる程ないくせに

『肩が凝るよ』

と笑顔を見せる。

そんな僕を表面上だけしか見えない真理子さんは安心したように

『よかったぁ…ごめんね~』

と俯く。

そして

『あッ!まだ編集さんいるかなッ!?』

と慌てて携帯電話をポケットから出し、テラスに飛び出していった。

『~…はい、うん…そうなの………実家が…~………』

テラスで編集部と話す真理子さんの横顔はとても綺麗だった。

『…そう…うんうん……』

微かに聞こえる大先生の声が聞こえなくなるまで僕はテレビの音量を無意識に上げた。

僕は最低だ。
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