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ヒロイン三国ファンタジー
第17章 17 新しい時代
ところが魏王、曹操により自分が後継ぎとなり、そして皇帝となった今、肉体の衰えも伴い甄氏への熱情は冷めてきている。
美しい彼女は受け身で従順で、受け答えにも教養を感じるが、手ごたえなく物足りない。

 その点、曹丕に対しての愛情を得んと能動的な反応をし、己を売り込み、さらには進言までしてくる郭氏のほうが今では関心が沸く。
つまり甄氏とは身体を重ねる以外、楽しみがなかった。

「うっ、う……」

 じっとり汗ばむ甄氏の白い肌にしばらく顔をうずめ、身体を起こし曹丕は衣服を肩にかけた。快感を得ることのない甄氏は情事後の疲労もなくすぐさま身体を起こし、曹丕の衣服を整え始める。

 ため息をつきながら曹丕は甄氏に尋ねる。

「そちは曹植と親しいようだな」
「え? あ、はあ」

 いきなり曹植の名が出たことに甄氏は驚いたが動揺はない。

「曹植であればそなたの心を動かすことが出来るのであろうか」

 甄氏は賢明な女人である故、曹丕の問いの意図は分かる。

「曹植さまは素晴らしい詩を歌われますね」

 心を動かされるような美しい詩と褒めればきっと曹丕は曹植を厭い、かといってそれを否定すれば、ではなぜ曹植の訪れを拒まないのかと尋ねられるであろう。甄氏自身にもなぜ曹植は自分のもとにやって来、詩を吟じるのか分からず、また彼に対して彼女が何か思うこともなかった。
それはかつての夫、袁煕にもそして曹丕にもなく、流されるままここに居るだけの事であった。

「そなたを本当に得るのは一体誰であるか」

「……。陛下以外におられますでしょうか?」

「まあ、よい」

 甄氏を抱き、冷静になった曹丕は結局、己の寝所に戻り静かに夜を過ごす。
甄氏は空になった寝台で今までの人生とこれからの人生を思うが何も思いつくものがなかった。
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