この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ヒロイン三国ファンタジー
第17章 17 新しい時代
まだあどけなさを残す曹植が甄氏のもとへとやって来、池のほとりの東屋で朗らかに詩を吟じる。
10歳近く年下の彼はまだ髪をきちんと結わず服装も着崩れ、まったく曹丕とは対照的な天真爛漫さがあり、甄氏はついつい訪れを許してしまうのである。
しかし厳しく彼にもうここへ来てはいけないと告げた。
「なぜですか?」
「文帝が、わたくしたちを不愉快に思っておいでなのです」
「そんな……。それは兄上ではないでしょう? きっと甄氏さまを貶めようとしている妃の誰かでしょう」
「……」
甄氏にもわかっていたことである。目星も付いている。しかしそれを口には出せず、出したところで何かが変わるとも思えなかった。
「とにかく、曹植さま、あなたのお立場も危うくなるといけません。陛下に気に入られるようにするのです」
「兄上はもう皇帝ですからもう私を厭うことはないはずです」
「だと良いですが……」
曹操が魏王になった時より、後継者として曹丕と曹植の間で家臣たちが派閥を作っていた。曹操としては、唯才を指針とはしていたがまだまだ長子が継ぐことを跳ね除けて曹植を跡継ぎにするほど軽率ではなかった。
また曹植の才は文学であって政ではないとも考えられていた。
しかし、いまだに曹植を支持する者がおり、献帝を廃したことを非難するものもあり、文帝の治世はまだまだ不安定である。
いつ、気楽な曹植の立場が群臣たちの権力闘争に巻き込まれるか分からないのである。
10歳近く年下の彼はまだ髪をきちんと結わず服装も着崩れ、まったく曹丕とは対照的な天真爛漫さがあり、甄氏はついつい訪れを許してしまうのである。
しかし厳しく彼にもうここへ来てはいけないと告げた。
「なぜですか?」
「文帝が、わたくしたちを不愉快に思っておいでなのです」
「そんな……。それは兄上ではないでしょう? きっと甄氏さまを貶めようとしている妃の誰かでしょう」
「……」
甄氏にもわかっていたことである。目星も付いている。しかしそれを口には出せず、出したところで何かが変わるとも思えなかった。
「とにかく、曹植さま、あなたのお立場も危うくなるといけません。陛下に気に入られるようにするのです」
「兄上はもう皇帝ですからもう私を厭うことはないはずです」
「だと良いですが……」
曹操が魏王になった時より、後継者として曹丕と曹植の間で家臣たちが派閥を作っていた。曹操としては、唯才を指針とはしていたがまだまだ長子が継ぐことを跳ね除けて曹植を跡継ぎにするほど軽率ではなかった。
また曹植の才は文学であって政ではないとも考えられていた。
しかし、いまだに曹植を支持する者がおり、献帝を廃したことを非難するものもあり、文帝の治世はまだまだ不安定である。
いつ、気楽な曹植の立場が群臣たちの権力闘争に巻き込まれるか分からないのである。