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あなたの胸の中で眠る花
第3章 新しい春
退院後、私は佳永子先生と一緒に施設に帰ってきた。結局、付き添ってくれた男性の名前は分からないまま。探しようがないので、諦めることにした。
部屋に入ると、同室のしーちゃんが心配そうに駆け寄ってきた。
「こっちゃん!もう大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。心配かけてごめんね」
「本当だよ、もう!ほら、病人はちゃんと休んで!」
そう言って私の背中を押してベッドに座らせる。彼女は小学六年生だけど、とてもしっかり者だ。
「お水がいい?お茶がいい?あ、ポカリもあるよ?」
「大丈夫だよ、もう退院したし…」
「だめ!その油断が危ないの!今日のトイレ掃除は私がやるから、こっちゃんは寝ててよ。いい?」
しーちゃんは飲み物を取りに、部屋を後にした。相変わらず世話焼きだなぁと思いつつも、それが嬉しかったりする。こんな私でも心配してくれるなんて、死にたいなんて思うのはやっぱり罰当たりだよね。自分は恵まれているはずなのに、心の虚しさが消えないのは何でだろう。