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あなたの胸の中で眠る花
第3章 新しい春
近くの定食屋で昼食をとる。温かいうどんをすすっていると、私の携帯が鳴った。画面を見ると懐かしい人物の名前が。
「真ちゃん、再来週帰ってくるって」
「本当?久しぶりねぇ、もう二年くらい経つかしら」
真ちゃんは私の二歳年上で、今は東京の大学に通っている。施設に入った当初は彼によくいじめられてたっけ。私があまりにも喋らなかったものだから、気に食わなかったんだと思う。今では笑い話にできるようになったけど。
真ちゃんが施設を出てからは一度も会っていない。たまに連絡を取っていたけど、忙しいみたいでいつも二、三通交わす程度。兄のような存在だった真ちゃん。二年も帰ってこなかったら都会に染まってるんじゃないだろうか。会いたいような会いたくないような。
「再来週なら、引っ越し手伝ってもらえば?」
佳永子先生が水を飲みながら、思いついたように言った。
「よかったね、男手あったほうがいいでしょ?」
「そうだけど…真ちゃん絶対面倒くさがるよ」
「だから当日まで黙っておくの。サプライズね!」
いたずらっ子のように笑う佳永子先生。真ちゃんには悪いけど、そうしてもらおう。年度末で先生たちは忙しいと思うし。二年も帰ってこなかったんだから、これくらい手伝ってもらってもいいよね。
二行ほど打った後、私は返信を押した。