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あなたの胸の中で眠る花
第1章 過去
父が亡くなったのは、私の六歳の誕生日だった。
「よーし、今日はこっちゃんの大好きなチョコレートケーキ忘れずに買ってくるからな!」
「うん、楽しみー!」
寒空の下、保育園まで手を繋いで歩く。約二十分の道のり。父と歩けばあっという間だった。門の所で先生たちに挨拶。ほとんどの園児は母親が送り迎えするため、父の存在は珍しいらしく、よく労われていた。名残惜しく一旦手を離すと、父はいつも私のおでこと自分のおでこを合わせて「ごっつんこ」をする。小さく行ってきます、と言ってくしゃっと笑う。私はそれが大好きだった。
でもそれがその日最後になるなんて思ってもみなかったよ。