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あなたの胸の中で眠る花
第5章 ♦︎曖昧な恋心*
朝、目が覚めると、心がちょうど家を出ようとしていた。
「真ちゃん、起きたの?私もう出るから、部屋の中自由に使っていいよ。出かける時は鍵閉めてね、ここに置いとくから」
そう言って俺があげた猫のキーケース付きの鍵を玄関の棚に置いた。
心を見送ると、俺は顔を洗いに洗面所へ向かった。冷水で顔をシャキッとさせるが、まだ眠い。風呂でも入るかな。こんなにゆっくりした朝を迎えたのは久しぶりかもしれない。大学に入ってから毎日目紛しい日々を送っている。来年は就活もあるし、もっと忙しくなるだろう。
服を脱ぎ、全裸の状態になる。洗濯カゴには心の服が無造作に入っていて、その隙間からパンツであろう花柄の下着が顔を覗かせる。
俺のこと、どんだけ信用してんだよ。
その信用が嬉しくもあり、少し不満でもある。
さすがに一緒に入れるのは躊躇い、余っていた袋に自分の服を入れた。恋人でもないのに、泊まらせてなんてずうずうしかったよな。そんなことを思いながらも、心の優しさに俺は甘えている。
あいつの優しさは昔から変わらない。
迎えに来た時のコーラも、引っ越しが終わった後に出すお茶も、別になんてことないんだけど。
ふわっとした照明の下で、熱めのシャワーを浴びる。俺には少し熱いが、温度調整はしない。昨夜、この場所で、この温度で、シャワーを浴びていた裸の心を想像する。若い男がいるのに、ドア一枚隔てた向こう側に警戒もせずに裸になるあいつに腹が立つ。
泊めてって言った時もそうだ。
顔色も変えず、真ちゃんならいいよといった感じで。
少しは意識しろよ。
家族みたいに一緒に過ごしたけど、もう子どもじゃないだろ。
深い溜息を吐く。
いつの間にか勃起していたソレに気付き、俺は馬鹿にしたように鼻で笑った。