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あなたの胸の中で眠る花
第6章 縮まる距離
真ちゃんが東京に帰った後の部屋は、とても静かに感じた。
誰かと過ごした空間で一人になるのはもう何度も経験している。毎回同じ気持ちになるのに、慣れることはない。
朝、目が覚めたら、真ちゃんと手を繋いで寝ていた。
一緒に寝たのは、何年ぶりだろう。懐かしさと恥ずかしさで胸が熱くなる。成長して男らしくなった体つきにドキッとしたけど、この安心感はやっぱり家族だからだ。
口を開けて熟睡している真ちゃん。黙ってたらかっこいいのに。でもこの寝顔はちょっとかっこよくない。
ふと、真ちゃんの鎖骨に虫刺されのような赤いアトがあるのに気付く。蚊に刺された?よく見ると、二、三個ついている。
もしかして…
なんとなく、繋いでいた手をパッと離した。
都会にいたら出会いも多いだろうし、彼女だってできるのも当然だろう。真ちゃんは人見知りしないし、明るいからきっと友達も多い。私とは正反対だ。
彼女がいるから帰ってこなかったのかな…ありえる。
この三日間だって忙しい合間を縫って来てくれたんだから。そう思うと、いつまでも真ちゃんに甘えてはいけないような、そんな気持ちになった。