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あなたの胸の中で眠る花
第7章 ♢過去*
時計に目をやると、午前三時を回っていた。
一体どのくらい寝ていたのだろうか。こんなに寝たのも、こんなに体調を崩したのも久しぶりだ。
トイレから出ると、空腹に気付く。朝から何も食べていなかったな。片瀬さんが用意してくれたお粥を電子レンジで温める。水分は飛んでしまったが、味は美味しい。
優しい子だな…最初はクールで影のある子だと思ったけど。
電車で会った時もベランダで顔を合わせた時も、どこか遠くを見つめていたのが気になった。
お粥をあっという間に食べ終え、茶碗をキッチンのシンクに置く。
なんだか堤くんに悪いな。やましい気持ちはないが、こんな夜中に未成年の子と部屋にいるなんて良く思わないだろう。まぁ仕方ない状況でもあるが。
片瀬さんに風邪をうつしたら大変だ。鞄に入っていた残りのマスクを着けた。ゴホッゴホッ。まだ喉は痛みがある。
片瀬さんはまだ起きる気配はなさそうだ。
少し幼さが残る寝顔は、俺の心に過去の懐かしさを与えた。
娘が生きていたら……こんな風に看病してくれたのかな。