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あなたの胸の中で眠る花
第2章 真冬が繋ぐ出会い
12月。
スカイブルーのマフラーに顔を埋めながら、走って駅に向かう。今日は期末テストが終わって久しぶりのアルバイト。予想外に委員会の仕事が長引いてしまった。もう三年生なんだから、早く後輩に引き継げばいいのに。いつもは二駅分くらい余裕で歩いて行くけど、今日は間に合いそうにない。冷たい空気が肌に当たって痛い。息を切らしながら駅に辿り着くと、たくさんの人混みに圧倒された。うそ、こんなに混んでるの…?金曜日だから?溜息を吐きながら改札を抜けて自販機の前で待機していると、数分後には電車が来た。車内はあっという間に満杯になる。私はすぐ降りれるようにドアの前に立った。弾き出されるほどではないが、知らない人と密着したくないからなるべくドアと密着する。いろんな人の匂いが混ざってる満員電車は好きじゃない。やっぱり電車には乗るもんじゃないな。
そろそろドアが閉まりそう、と思った瞬間、駆け込んできた人がいた。「すみません」と誰に謝ってるのか分からないけど、その人は申し訳なさそうに茶色の鞄を抱きしめるように両手で抱え、私と同じようにドア側を向いた。ちょうどよくドアが閉まり、電車はすぐに動き出した。その人はふぅ、と一息つく。パーマのかかったボサボサの髪に綺麗に剃られた髭のあと。ネイビーのマフラーをして、サラリーマンにしては少しカジュアルめな服装。顔立ちは悪くないのに、疲労感が漂っている。パパが生きていたら、同い年くらいかなぁなんてたまに考えたりする。
あれから十二年。
パパ、私、もうすぐ高校卒業するよ。