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人魚島
第9章 枝分かれの現実
『あ、あの三咲さん?』

『なぁに?』

カウンターを拭きながら三咲さんが微笑む。
僕は酷く酔っぱらっていた。

『スナックマーメイドは?』

僕が小首を傾げれば腹を抱えて三咲さんが笑い出した。
余程可笑しいのかマスカラした目尻に涙迄滲ませている。

『なんで知っとんの?懐かしいなぁ、スナックマーメイドとか』

『やって無いんですか?』

『もう2年前かな…明が海上で死んだんはさ』

フッと寂しげに笑いながらピアニシモに火を付けて思い切り吸い込む三咲さん。
ああ、この時空間じゃ明さんは死んでいるのか。
帰ろう、こんな時空間は鼻から駄目だ。
しかし、どうやったら帰れるんだろう?

『明が死んで、咲子と花子育てる為に魚姫でアルバイト、夜な夜な客に抱かれてさ、咲子も花子も食べ盛りやけんや、おばちゃん頑張らな』

『橘さんは?』

『それもまた懐かしいなぁ、去年暮れに肺癌で溺れる様に30歳で亡くなったよ?アンタなんだってスナックマーメイドや孝の事知ってんのさ?あらかた花子辺りから聞いたか?ん?』

まさか別の時空間から来たとは話せ無い。
明さんだけじゃ無く橘さん迄亡くなったのか、益々この枝分かれした現実には用は無いな。

『水ください、帰ります』

『花子待ってるんちゃうの?』

『え?』

『花子も夏休み中は魚姫でアルバイト中やからな』

『まさか売春してるのッ?』

『アホたれ、18歳未満に流石にそんな酷い事出来んやろ?プレイ後のお嬢の部屋の片付けや、客引きや、今頃蓮かミケの部屋片付けてるよ、行ってみる?』

『良いの?』

『うん、多分蓮の部屋やわ、最上階、遊びに行った事あるけん、解るやろ?もう9時やし、花子は帰宅時間や、降りて来たら二人でここで晩飯食いや?おばちゃんカルパッチョ作ってみたけん』

どうやらこの時空間では三咲さんは料理が出来るらしい。
ほとほと見た目は同じ人なのに、中身は多少違うんだな。
しかし、この時空間には用は無いぞ。
どうやったら元の時空間に戻れるんだ?

『はぁ、疲れたぁ…あ、ハルくん』

エレベーターが不意に開きアディダスのTシャツにハーフパンツのジャージにサンダル姿でモップとバケツ片手に花子がやって来た。
顔はやはりあった。
美しい笑みだ。

『また来てくれたん?って、わ、お酒臭い…ちょっと呑み過ぎだよ』

笑われながら水を出された。
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