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人魚島
第9章 枝分かれの現実
僕等は離れて春魚迄ウオトを見送り自転車で坂道を下り、山間の咲子とセックスした人気の無い公園にやって来た。
特に意味は無かったが落ち着いた場所で花子と二人になりたかった。

『今日も使うの?時空間旅行』

花子が心配そうに僕の顔を覗き込む。
僕は花子の手をギュッと握りながら頷いた。

『行こうとして行ける物じゃ無いから、少し休もうか』

『あ、小遣いの銭あるけん、自販機あるけん、なんか飲も?ハルくん何が良い?』

『珈琲ある?』

僕の言葉に『馬鹿』と笑う花子。

『ハルくん珈琲飲め無いやんか、無理してカッコ付け無くて良いから、烏龍茶にする?』

『ハハハ…生憎バレたかなぁ?じゃあ烏龍茶にするよ、花子は?』

『あたしは…アイス珈琲かなぁ』

ガシャッと落下音がし、缶珈琲と烏龍茶の缶が出て来た。
花子がハンカチ二枚取り出しぬるくならぬ様に缶に巻いて手渡してくれる。
こう言った何気無い心配りや配慮が有り難かった。

『花子は優しいな』

『そう?』

『ハンカチ巻いてくれた人初めてだよ』

『そうかな?』

はにかむ花子、本当に愛しい。
花子がアイス珈琲を呷る。
喉が上下していて色っぽい。
抱きたいッ!
しかし、僕にはもはや花子が大切過ぎて手出し出来無くなってしまっていた。
愛が大きくなると逆にセックスには至らないのだと思い知った。

『あ…』

なんだか背筋がゾクッとした。

『き、来たみたい…』

僕は花子の手を握る。

『来たって?え?』

『タイムリープ』

僕の意識はどんどん遠ざかって行く感覚がした。
手足が痺れ呂律が回らなくなる。
目蓋が重く痙攣する。
次第に意識は遠退き、僕は目蓋を閉じた。
ハッとして目を開けば魚姫一階のショーパブだった。
カウンター席にて僕は眠っていたらしい。
スマートホンを取り出し時刻を確認する。
夜中の9時過ぎ、日付は7月28日、タイムリープした日付と変わら無い。
無事になんとかタイムリープしたらしい。
ズンチャンズンチャンパラパラが流れる中『起きたぁ?』と良く聞き慣れた声がカウンター越しに聞こえ見上げればピチピチのバニーガールの格好をした三咲さんがシェイカー片手に『呑みなさい?』とジンカボスを提供した。
何故スナックマーメイドの三咲さんが売春街の魚姫で働いているのだろう?
そして僕は何故ここに居て眠ってしまう程呑んでいるのだろう?
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