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人魚島
第10章 東京編
僕は無言のままウイスキーをグイッと呷った。
何かを振り切る様に。
ミケさんがブラックデビルを燻らせながら『昨日かな?花子から相談受けたんやわ、えらい震える声でな、赤ちゃん卸したいってな』と僕のグラスにウイスキーのお代わりを注いだ。
僕は『うん』とウイスキーを呷る。

『えらい狼狽してたよ、花子の奴。様子がおかしかったもん』

『………』

僕は黙ってウイスキーをボンヤリ傾けた。

『んでな、うちは止めたんや。仕事柄HIVには詳しかったけんな、適切な治療さえ受けてりゃ子供かて生めるって説得したんやで?』

『はい、僕だってミケさんと同じ様に説得しましたよ』

『聞かんかったんやろ?』

『はい、けど僕のプロポーズには間違い無く応じてくれたのに…』

『結婚はするんやろ?』

『花子は…花子は結婚破棄だと』

『まさか』

ミケさんが目を丸くする。
僕は続けた。

『花子は婚約破棄しましたよ。辛かったらしい、なんか泣いてましたし、HIVウイルス感染より堕胎の事実の方が辛かったらしい、そりゃそうですよね?仕方無いですよね?』

ぽつりぽつりと一字一句話す僕。
ミケさんはブラックデビルを燻らせながらうんうんと一字一句聞いてくれていた。

『まぁ、花子がHIVウイルス感染したのは僕のせいだし、堕胎だって…僕の責任だ、詫び切れ無いよ、土下座したって許して貰える話じゃ無い』

『アンタだけの責任じゃ無いやろ?売春婦を選んだのかて花子や、花子かて子供や無いけんな』

『しかし…僕がしっかり養ってやれば良かったんだ』

僕は項垂れながら『ブラックデビルください』と手を差し出す。
ブラックデビルを一本乗せながらミケさんは『今夜はアンタの側におりたいけん、同伴するわ、ホストクラブとか久しぶりに行くわ』と笑う。
僕は空しさを感じながらブラックデビルを咥えホストクラブドラゴンゴッドのチープなライターで火を付けた。
勢い良く燃え盛るブラックデビル。
それを吸っては吐いてを繰り返す僕に『ヴィヴィアンウエストウッドのワンピースあるけん、それ着てく』と奥の部屋で着替え始めるミケさん。
衣擦れの音がする。
ミケさんがヴィヴィアンウエストウッドのAラインの白いワンピース姿で居間にやって来る。

『どっか行く?』

『映画でも観ますか?』

『やぁ、久しぶりのデートだよ』

はしゃぐミケさん、可愛い。
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