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人魚島
第3章 説教
『2歳で父ちゃんの仕事の都合でな広島県の呉市に引っ越しして来たんや、で、三咲は年長さん、俺は年少さん、呉市のとある幼稚園で知り合って友達になったんや』

芋焼酎をらっぱ呑みしながら橘さんは続ける。

『最初は単なる仲良しやったけど、俺は次第に世話好きな三咲になついて行った』

新しく赤丸を取り出し、ジッポーの炎を近付け肺一杯に吸い込み鼻の穴からブワッと吐き出す橘さん。

『小学校も同じやったけん、呉市の古びた小学校や、中学校はあいつは吹奏楽部、俺はサッカー部やった』

無精髭を撫で回しまた再びらっぱ呑みし、橘さんは続けた。

『すぐさま卒業が来たけん、三咲は中学校出るとすぐさま市内のクラブで働いてナンバーワンに登り詰めたけん、俺はサッカーボール転がしながら三咲が退勤するタイミングに雪ん中でもチャリで迎えに行ったわ…ハハハ…懐かしいなぁ、ちょうどお前ら程度の年齢やったな』
 
カクカク顎を動かしながら輪っかを作り珍しく穏やかな微笑みでフッと笑い、宙に浮かぶ輪っかを眺めながら『でな』と続ける。

『俺13歳三咲15歳三咲には年上の大学生の彼氏がおったけんが、俺は惚れとった。人生一代の大博打、俺は三咲に気持ちを伝えたけんが『彼氏と結婚するけん、無理や』言われた、けど、翌月三咲は別れやがったけんチャンスやおもたら、すぐさま三咲には新しい恋人が出来たけん、玉砕や』

懐かしげに語る橘さん。
僕達は黙って耳を傾けていた。
説教されるよりマシだと考えたからだ。

『んで三咲はバンバン売れてな、俺も童貞捨ててしばらく離れ離れじゃった。俺が22歳の時に就職先が決まったけん、こんな遠島の古びた小学校の一年生担任や、三咲に会えたんは奇跡に近かった。三咲は21歳の時に魚沼家に嫁いでたな、ガキは出来たが流れたらしい、んで俺が25歳あいつ…三咲が27歳の時に酔った勢いで抱いてしもて距離一年位置いた…毎日三咲想ってマスターベーションしたわ』

そこでようやく灰皿に吸殻を捩じ込みながら続ける橘さん。
アルコールで多少饒舌になっているのかも知れ無い。

『で、26歳の時、三咲と明さんが大喧嘩した時、三咲が俺のアパートに駆け込んで来てな雨でずぶ濡れ開口一番『うちを力一杯抱いてッ!』って泣き騒ぐけん、近所迷惑もあったけん部屋に入れたらいきなりキスされてな、そのまま朝迄優しく抱いたんよ』
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