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人魚島
第4章 咲子の村案内
パンパン卓袱台を叩きながら咲子が続けた。

『うちが長女や、うちが長女や、うちが跡取りに子供作るけんな邪魔はさせへんでッ?』

『長女長女言うたかてアンタは魚人様の巫様や無いけんな、アンタ花子にシスターコンプレックス抱いてるんちゃうの?』

シスターコンプレックス、言われてみれば、その通りだ。
三咲さんの見解は間違ってい無いと思う。

『ハァッ?うちがあんな化け物にシスターコンプレックスぅッ?アホらしいッ!』

咲子が髪の毛をパサパサ鳴らしながら首を左右に振った。

『まぁ花子は魚人様の神聖なる花嫁、巫様、お姫様や、嫉妬妬くのも解らんでも無いよ?あたしかて妹おるけど、妹の方が明らかに恵まれとんもん、同志社女子大学出てさ、大手の外資系の旦那と24歳の若さで結婚してさ、子供も4人も恵まれた。あたしは学に恵まれんかったけん、じゃし家も平屋の貧乏一家やったけん、中学出たらすぐさまホステスとして家計を支える為にも夜な夜な日毎働いたわ。辛かったけんね、毎日の様に泣いとったわ』

灰皿の中に吸殻を捩じ込みながら三咲さんが続けた。

『だいたい姉妹って言うたら姉が苦労すんねん、うちの周りの友人等も姉妹んとこはせやったわ、アンタは何が不服なん?そりゃ年中父ちゃんはおらんけん、寂しい思いさせとるかも知れへんけどさ…ああ、もう7時やん、店開けな…』

三咲さんが咲子に『とにかくアンタには家族おるけん、伸び伸び大人に成長し?』と咲子の頭をワシャワシャ撫でてそそくさと居間から消えて行った。

『三咲ちゃん、苦労して育ったからね』

早坂先生が芋焼酎をグビッと呷りながら呟いた。

『あいつ親おらんけんな』

橘さんも芋焼酎の入ったグラスをボンヤリ眺めながら続けた。

『三咲の母親は三咲同様にホステスやった。まぁ、場末の三流カラオケパブやったけどな、旦那は18歳も年上、16歳で出来ちゃった結婚して三咲と三咲の妹産んで次に父親が誰か解らん子供を孕んじまった母親と父親は三咲が9歳の多感期に離婚、三咲と三咲の妹は父親に預けられたが、この父親がようけ働かん体たらく、しかもアルコール依存症、生活保護せしめて夜な夜な12~3歳になった三咲をレイプ、けど妹の方には手出しせんかった。三咲だけが別嬪やったからや、そもそも三咲自体がその親父のガキか解らんかったらしい』

鼻から息を軽く抜きながら橘さんは続ける。
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