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人魚島
第4章 咲子の村案内
『そりゃ猿って言うねん』

灰皿に灰を落としながら橘さんがニヤリとする。

『まぁ、俺は童貞捧げるの18歳と遅かったけん、そこまで猿や無かったけどな、ああ、コンドーム5つばかり渡しとくけんや、大事につこて咲子の事可愛がったれや』

橘さんがルイヴィトンの長財布の中から繋がったコンドーム5つを取り出し卓袱台の上に並べた。

『これは葡萄味で、こっちがメロン味や、後これは梨味、林檎味、パイナップル味もあるぞ?好きなやつから使えや』

『はい…ありがとうございます』

僕はおずおずとコンドームに手を伸ばした。

『おっちゃん瓶ビールあるで?呑む?』

暖簾をくぐり割烹着姿の可愛い咲子がやって来てちょこんと僕の隣に座る。

『洗い物済んだんか、結構結構、咲子は良い嫁さんになるな』

『今日はそれしか言うとらん』

『ハハハ…そか?ああ、駄菓子屋で線香花火でもやりに行けや、雨やけん軽トラで送ったるけん、ああ、お前禅か敦と喧嘩でもしたんか?今気付いたわ、なんやその絆創膏』

昼に敦さんに殴られた傷が不意にズキッとした。
僕は絆創膏に指を這わせながら『たいした喧嘩じゃ無いです』と無表情で項垂れた。

『あらかた敦から手出しされたんやろ?敦は咲子に長年ホの字や生まれた時から親しい幼馴染みやったけんな、何かあれば必ず敦が咲子を守ってたけんな、俺はよ、どら息子の敦になら咲子くれてやっても構わんおもてた、敦は俺の若い頃にすげぇ似とるけんな、あの女に飢えたギラギラした目付きやとか暇さえあれば四六時中オナニーしとるとことかな』

『敦さんってどんな人なんですか?』

『素直な可愛い奴、俺の見解はそうや』

『何処がよ』

咲子が唇を尖らせながら卓袱台をパンパン叩く。

『しかし新手のダークホースが咲子をかっ拐ったけんな、俺からは何も言えん、まぁ、遠山家とは仲良くしときたいけん、あんまり喧嘩すんな、じゃし敦は俺の空手の愛弟子や』

『おっちゃん、ハルキにも教えたったら?』

咲子があたりめをポリポリかじりながら呟く。

『ああ、まぁ、また今度な、よし、ほな行くぞ、俺はそのまま三咲の店寄るけん明日午前中迄帰宅せんけん傘持って行けや』

『おっちゃん軽トラ出さんで良いよ?立派な飲酒運転やけん』

『たいした距離や無いけん、甘えとけ、しかし止んだり降ったりやな、面倒くせぇ、おら、行くぞ』
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