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いつくしみ深き
第1章 いつくしみ深き
「今日から一週間、休暇をください」

 月曜日の朝一番。祐希は神妙な顔で直属の上司に申し出た。

「一週間だと!? このクソ忙しい時期に何を寝ぼけたことを言ってるんだ!」

 上司である課長は烈火のごとく怒り狂った。課内の視線が二人に集中する。

「寝ぼけてなんかいません。休暇がもらえないならこの場で会社をやめます!」

 祐希は頑なだった。大柄な体を小さく縮め、追いつめられた子鹿のような眼差しで課長を見上げている。

「何か理由がありそうだな。向こうで聞かせてもらおうか」

 課長は祐希が本気だと見てとると、声の調子を変え、会議室へ行くように指示を出した。

 がらんとした会議室に向かい合って腰を下ろす。課長は机の上で指を組んだ。

「一体どうした? 藤澤」
「実は……」

 祐希はすべての事情を、課長に打ち明けた。

 同性の恋人がいること。その恋人はすでに余命わずかの状態であること。恋人の願いを叶えるための休暇が欲しいということ。

 今まで隠してきた、自らの性的指向のことを他人に話すのは勇気が必要だった。だが、なりふり構ってはいられないのだ。祐希には時間がなかった。

「お願いします。俺は……」

 祐希はきつく目を閉じ深く頭を下げた。軽蔑されても会社を首になってもいいと覚悟をしていた。

 ややあって課長が小さくため息をつくのが聞こえた。恐る恐る顔を上げると、眼鏡の奥の瞳が心配そうに祐希を見つめていた。

「わかった。そういう事情なら仕方がない。一週間くらいお前がいなくとも何とかなるさ。ただ、いきなりではなく、もう少し前に相談してほしかったね」
「申し訳ありません」
「……恋人、大事にしてやれ」
「はい!」

 暖かな色の声に、祐希は男泣きに泣いた。受け入れてもらえるとは思っていなかった。ギリギリまで会社に切り出せなかったのは、同性愛に対する偏見を何度も目の当たりにしてきたからだ。祐希は、この会社で、この上司の下で働けて、幸せだと思った。
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