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溶かされてみる?
第10章 惑う心と誘う夢
ま…さか…
その子どもたちの中に恋と呼ばれる少女がいた。
これはあたし…?ってことは…
周りにいる男の子たちは…みんななの…?
次々に出てくる記憶のピースがカチッと音を立ててハマっていく。
あたしとみんなは昔にすでに出会ってて
それに最近よく見る夢はあたしのお父さんとの記憶…?
やだ…怖い、怖いよ…
あたしは家を出てきた時よりも今の方が恐怖を抱いていた。
記憶が戻りつつあるのが逆に怖くて、息ができない。
みんなが言ってたことって…こういうことだったの…?
全部の記憶が鮮明に思い出せたわけではない。
ただ今現時点で、みんなと昔に出会っていたこと、最近よく見る夢の正体はあたしとお父さんだということは朧げに思い出しつつある。
みんなはじゃあ…はなから全部しってて…
ベンチでうずくまるあたしは、一気にいろんな記憶が頭の中に渦巻いて整理できない。
あたしは、なにを忘れてるの。
なにを思い出せてないの。
残りの記憶を思い出せば出そうとするほど、頭に警告音が鳴る。
「あたし…怖いよ…」
なにも聞かされてない…なにも知らない。
いいや、そうじゃない…
今までだってなにかそう思い当たる節はいくつかあった。
それなのに、あたしはみんなになにも聞かずそのまま逃げてきた。
今だってそう。
真相にぶち当たるのが怖くて逃げ出して1人で泣いて。
これじゃ、なにも変わらない。