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溶かされてみる?
第10章 惑う心と誘う夢

あ…あたし…
今まで何で忘れて…

みんなはゆっくり時間をかけてあたしに説明してくれた。
あたしの中で記憶のかけらがすべて繋がった。

「あたしは…な…んてことを…」
あまりの事態に追いつかないあたしの心と身体は悲鳴をあげる。
「落ち着いて恋ちゃん。」
黎泱先輩があたしの背中ゆっくりさする。

記憶がもどって良かったですなんて話じゃない。
大事な、重要な、忘れてはいけない、大切な記憶を…
あたしは何年も忘れ続けて生きてきた。

その中であたしは肉親を失っているのにもかかわらず。

「恋が悪いわけじゃない」
お母さんがあたしの手を握りながら、そう訴える。

「あの日は雨もひどくて、トラックも多分前があまり見えてなくて…」
パパは頭で考えるよりも先に、きっと咄嗟に恋を守ろうと身体が動いたのよとお母さんは震えた声であたしにいう。

そうだ…
お父さんを失ったあたしの悲しみ以上に
愛する旦那を失ったお母さんの悲しみは深いはず。

「ごめんなさい…ごめんなさい…あたしッ…」
震える手でお母さんの手を握り返しながら、あの日と同じように必死に謝る。

「謝らなくていいの…恋が悪いんじゃないのよ…」
ただあの日は悪いことが重なってしまったのよとお母さんは泣きながらあたしに微笑む。

「俺らもあの時、公園で遊んですぐみんなで帰ってたら耀さんが死ぬことはなかったんだ」
律先輩は悔しそうにそう呟く。

そうじゃない。
何よりもその事件の発端を作ったのは他ならぬあたしで、
みんなに深い傷を負わせたまま、一番忘れてはいけないあたしが忘れて今まで過ごしてきた。

なんて残酷なことを…
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