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溶かされてみる?
第11章 嵐の予感
「あたしなら絶対帰らないでってべそかいてた。」
「なんだよそれ」
律先輩はすこし呆れたように笑う。
「りっくん、いっつも頑張ってねって胡乃さん送り出してた。」
「覚えてねえ」
「でも…その分、りっくんはいっつも寂しそうだった」
あたしは律先輩の手のひらに手を重ねた。
「胡乃さんにりっくんの気持ち話してみたら…?」
「…いまさら俺はそんな家族ごっこなんかしねえ」
そう言いつつも、律先輩の顔は悲しみに満ちていた。
いっつもそうやって自分の中に抱え込んで…
あたしはおもむろに律先輩の頰を両手で包んであたしに近づけた。
「は…「この意地っ張り!!」
「な!「気持ちぶつけてみる前から逃げるなりっくん!」
あたしは必死に律先輩の目を見て訴える。
「家族ごっこって言った時のりっくん、ほんとはそんなこと言いたくないって顔してた!」
「んなこと「あるよ!りっくんはそんな切り捨てるようなこと言わない!」
「りっくんは不器用だけど優しいもん!それに…」
反論するたびに切ない表情を浮かべる律先輩をあたしは抱きしめ
「人一番寂しがり屋だもん…」
そう呟くと、律先輩は驚いたように動かなかった。
「みんなの前ではそんな風に振る舞わないけど、見てたらわかるよ。」
「恋…」
律先輩はあたしの背中に手を回しながら、か細い声で呟いた。