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第13章 一難去ってまた一難

「はじめっから全部見てた?」
「女の子が皐君にこぞってなんか言い始めたところから」
「ま、ほぼ全部だね」
疲れたように壁にすがる皐君。

「さっきの女さ、あんだけよがるように喘いでたのにって耳元で囁いたらスッゲー顔で俺のこと叩いたよ」
「…見てた」
あたしはチラッと皐君の顔を見るが、平然としているのか悲しいのかよくわからなかった。

「皐君」
「なに?」
「皐君はあの人たちのこと好きだったの?」
あたしは率直な疑問を皐君にぶつけた。

「…ただの暇つぶし」
少し間があって皐君は笑顔であたしにそう答えた。
ただ、その笑顔はいつも意地悪な顔でも面白がって笑ってる顔でもなくて、どこか悲しいようなそんな笑顔だった。

「そんなこと言ってるくせに、なんでそんな顔するの」
「え…」
「こーちゃんって昔からそう」
そう。昔からこーちゃんはそうだった。
何か隠してる時、思ってることとは真逆のことを言う時とか絶対作った笑顔をする。

「昔からなに」
少しイラつきながら皐君はあたしに聞く。
「ほんとはそんなこと思ってないくせに」
あたしはそんな皐君の顔見て冷静に言う。

「恋ちゃんにそんなことわかんの」
「わかるよ、昔からのこーちゃんの癖だもんそれ」
「…意味わかんない、昔と今の俺は違うんだよ」
皐君は立ち上がり、さっきの教室に入っていく。

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