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ぬばたまの 夜に抱かれ 望月の 刻のゆくさき 夢のゆくさき
第1章  
「我と性を交わし、神の気を移すのだ。神の気が残らずお前に移れば、お前は新たな地主神となるであろう」
「性を交わす……。でも僕はまだ子供なので、誰とも契ったことはありません」
「案ずるな。なにも人のように裸で睦みあう訳ではない。掌をこちらに。我と掌を合わせるのだ」
「あの……」

 少年はなぜか戸惑っているようだった。

「我の気はすでに流れ出している。さあ、早く」
「あの、地主神様のお名前を教えてください」
「なぜ名を問う。我は地主神。神に名などはない。お前の好きに呼べ」
「地主神様というだけでは淋しいですから。じゃあ『夜』様はどうですか? すごく綺麗な夜空みたいな色の瞳をしてるから」
「『夜』か……」
「気に入りませんか?」
「好きに呼べと言ったはずだ」

 地主神は唇を微かに上げた。それは遥か昔、地主神が人だった頃の名だった。再びその名で呼ばれようとは、思ってもいなかった。

「ではいくぞ」
「はい、夜様!」
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