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第8章 　疑似セックス

　ご主人様は両腕をベッドに付き、男性器をさらに激しく擦りつける。私は、枕元のシーツを強く掴んだ。
　何かに掴まっていなければ、どこかへ落ちて行きそうな感覚。
　まだ、怖いという思いもあった。
「美桜っ。イっていいよ。イくの、見せて」
　クリトリスだけではなく、アソコ全体も痺れてくる。堪らなくなり、ご主人様に合わせて腰を動かした。
「あっ、ヤっ、ヤぁんっ、ダ、メぇっ、あぁっ！　はぁっ……」
　クリトリスに集まった熱が爆発したような感覚に、頭の中が一瞬真っ白になる。
　ビクビクと体が震えた後に力が抜けて、掴んでいたシーツから自然に手を放した。気を失ってはいないが、地下室でと同じように意識が朦朧としている。
「僕もっ、出すよっ……」
　激しく腰を動かした後、ご主人様が私の腹に放出した。
　少しの間私を眺めてからザーメンをティッシュで拭くと、ご主人様は添い寝してきて乳房を優しく揉む。
「分かる？　美桜。自分がイったの。オシオキ部屋で、覚えたんだ？」
　訊かれて、私は顔が火照りながらも小さく頷く。
　自分にも、やっと本当に実感出来た。友達から、イくというのは聞いたことがある。だが私には、想像も出来ない世界だった。
　思い返して見たが、オシオキ部屋で何度イったのか分からない。
　大体、あそこに何時間いたのかさえ分からなかった。
　今も挿入はしていないから、私は処女のまま。それなのにイった経験だけは何度もあるなど、私にとっては恥ずかしい。
「どうする？　泊まってく？　個室に帰った方が、美桜にとっては楽かな？」
　ジュースに薬を入れたものを、ご主人様に渡された。
「昼も食べて無いだろう？　ジュースだけでもね」
　私はそれを飲み干す。
　これで薬を摂るのは、何回目だろう。
　薬を摂る度に、本物のセックスに近付いて行く。だがそれは、この屋敷にいる限りどうしようもない事。
　それに、今の行為だってセックスに近い。そう考えると、セックスも思っていたよりつらくないのかもしれない。
　いつかは本当に愛する人と、初めて結ばれる時が来ると思っていた。だが私に、もうそれは許されない。
「あと1時間くらいで、個室に夕食が運ばれるよ」
　ご主人様が、私にパジャマと下着を差し出す。
「えっ……」
　それは、私の個室にあったパジャマと下着。