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ロリちゃん作品集 (一章読み切り式)
第37章  引っ越し


「麻菜。落ち着いて……」
 そう言いながら、自分も焦っていた。
 麻菜がもう少し大人だったら、全てを明かすことも出来る。
 それに俺は、離れていくことを覚悟しながらも、実際として捉えていなかったのかもしれない。
 ずっと一緒にいられる気になっていた。
「麻菜……」
 抱き付く腕を外し、麻菜が勉強に使っているテーブルを出す。麻菜を座らせ、自分も向かい合って座った。
「何が、そんなに、嫌なんだ?」
 改めて、麻菜の気持ちを聞いておきたい。
「お兄ちゃんは、イヤじゃないの? 麻菜が、遠くに行っても……」
「淋しいよ……」
「それだけ!? ホントは、麻菜のコト好きじゃないの?」
 問い詰めるように訊かれ、視線を落とした。
 もしかしたら、これがある意味チャンスなのかもしれない。
 今までの関係を清算して、麻菜は新しい生活を始める。本当は、それが正しい20歳と10歳の関係。
「麻菜……。本当に好きなら、遠くたって、好きなのは、変わらない、はずだろう……?」
 本心を押し殺して言った。
「お兄ちゃん……」
 落胆したような麻菜の呟き。
 近くにいるから、“大好きなお兄ちゃん”を恋と勘違いしているのかもしれない。
 また、そんな風に考えてしまう。
 耳年間で、セックスなどと口にしていた麻菜。誘ってきたから、怖がらせようと思っただけ。それなのに、自分の想いに気付いてしまった。
 麻菜が好きだということに。
 いつかは年相応の恋人が出来て、俺から離れていく。そう考えていたはずなのに、いざ離れるとなると胸の奥がズキズキと痛む。
「麻菜……。引っ越し、なんだから……。仕方ないだろう……?」
「お兄……」
 ノックの音がして、麻菜が言葉を切った。
「行ってくるわね。食事の用意しておいたから、麻菜ちゃんも食べてね」
「分かった!」
 そう言うと、母親はドアを開けずに行ったようだ。
「麻菜。食べてから、話そうか……」
 立ち上がると、麻菜がしがみついてきた。


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