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ロリちゃん作品集 (一章読み切り式)
第40章 01 初めての世界
「はあ……」
金曜日に家へ戻ると、私服に着替えてから一人で溜息をつく。
今日は給料日で半分降ろしてきたし、たまには、近所のスナックにでも呑みに行こう。オバチャンの“ママ”だが、若い子も少しはいる。
社会人になって、何年経っただろう。
就職したのは、二流の中小企業。二流の大学を出た俺には、合っているんだろうが。
給料はそう高くない割に、残業が多い。有休を取ろうとすると、社長に嫌な顔をされる。
まあ、残業代のお蔭で、一人なら暮らしは楽だが。
都内でも、下町と言われる2DK。五階建ての三階で、日当たりが悪いのと駅まで遠いせいで家賃は安い方。俺は駅まで自転車だから、あまり関係ない。
だから夫婦世帯は好まず、独身の野郎ばかり。
そんな俺の趣味は読書とネット。
読書といっても漫画が主で、エロい物なら小説なら読む。ネットでは動画を観たり、同じ趣向のいつもの仲間とチャットしたり。
週末は、アキバへも行く。同人誌やメイド喫茶。歩いているだけでも楽しい。
「うわあっ!」
地震だ。揺れが段々と大きくなってくる。
着替え終えた俺は、通勤鞄から財布だけを愛用の斜め掛け出来るバッグへ移し手に取った。
外に逃げようとした時、いきなり揺れが治まる。
テレビを点けてみたが、どの局でも地震のニュースをやらない。速報さえ。
疲れて眩暈でもしたのかと思い振り返ると、クローゼットが開き、中に黒い物が落ちていた。
「何だ?」
取ろうとしたが、物じゃない。
シミだ。
「なんか零れたのか? えっ、あっ!」
そのシミに体が吸い込まれていくのは、一瞬だった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「………………」
俺が座り込んでいるのは、草原。後ろには、ドアだけがある。
マンションへ戻ったのは21時過ぎなのに、ここはまだ夕方のよう。
恐る恐る後ろのドアを開けてみると、俺のマンションの玄関ドア。
「何なんだよ……」
やっと声が出た。
少し先にあるのは、アーチのかかった街への入口のようだ。
趣味の一つでもあるゲームの、RPGの世界のよう。