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ロリちゃん作品集 (一章読み切り式)
第40章 01 初めての世界
「可愛い。王族の人は、色々持ってるんだね」
アスカは髪を揺らして喜んでいた。経験がないから、仕上がりは不格好なのに。
「気に入ったなら、あげるよ?」
「いいの? 高いでしょ?」
100円均一の店で、ついでに買った物。
でも考えれば、物価が100分の1のここでは一万円になる。
「大丈夫。プレゼントするよ」
「ありがとう」
アスカは、本当に嬉しそうな表情。
「大事に使うね」
普通の黒いゴムでそこまで言われると、逆に恥ずかしかった。
今度は、可愛いアクセサリーでも持って来よう。
服に着替えると、アスカが上目遣いで見る。
わざとじゃなくて、身長差から自然にそうなってしまう。
「お兄ちゃん。また来てね? 忘れてた。名刺」
粗雑な紙に、手書きの名刺。
「ああ。絶対来るから」
名刺を鞄に入れ、頭を撫でる。
ここでの時間の流れが分からないから、明日とは約束しなかった。
アスカに見送られて店を出ると、もう暗い。
急いで外のドアを入ると、玄関へ戻れた。
開いたままのクローゼットには、黒いシミがある。
また会えると考えながら、座椅子に座ってスマホを観た。
いくら探しても、アスカの写真が無い。
あの部屋で、確かに観たのに。
気が付くと、時計は会社から戻った時間を指していた。
あの世界にいる間は、現実世界での時間が流れない。それとも、元の時間に戻るのか。
鞄を探したが、アスカにもらった名刺が無かった。
それなのに、渡したゴムと使った金は無くなっている。
使ったものは無くなるが、何も持ち帰れない。
不思議だが、アスカに会えればいい。
少し早いが疲れもある。
着替えると、すぐベッドへ入った。
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