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悠一郎の独り言
第17章 2017年11月28日(火)23:19
顔出しもしなければインタビューも受けません。
基本は書面でのやりとりになります。

「どんな…本を書かれているか…お聞きしてよろしいですか?」

少し控えめに聞いてくれました。
だけど…

「申し訳ありません…私がどんな小説を書いているかは出版社の方しか知らないのです…誰にも話していません…知り合いに読まれていると思うと恥ずかしくて…」

それは正直な気持ちでした。
私の小説を読んで色々な感想があると思います。
顔も見たこともない人ならばいいのですが、知り合いとなると気を使ってしまいます。
面白くなくても面白いというしかない状況が嫌で、何を書いているのか言った事はありません。
沙羅さんには申し訳ないのですが、その想いも伝えました。

「わかりました…大丈夫ですよ。では、その小説の挿絵を書いたりしているんですか?」

「ええ…そういえば、そんな話をしましたね。描いた絵を写真にとって担当者に見せると、これを使いたいとか言ってくれるんです。だから、こうやって描くのも半分は仕事なんですよね。」

「趣味が仕事にできるなんて素敵ですね。」

書いた小説が何なのか断ってもいやな顔一つしません。
それ以上に、私の仕事を素敵だと言ってくれます。

「沙羅さんも半分は仕事になってるではないですか。あのポストカード…貰えた時、うれしかったです。」

そう言うと、沙羅さんは恥ずかしそうに笑ってくれました。
それから色々と話して、4時半になりました。
この時間は別れる時間です。
明日からは雨予報で気温も下がる予定です。
そうなるとまた会えない日々が続きます。
だから、頑張って聞いてみました。

「明日…お店に行ってもいいでしょうか?」

ドキドキして心臓が飛び出しそうでした。
それでも言えたが自分に拍手を送りたくなりました。

「明日は雨ですよね。ぜひいらしてください。何か甘いお菓子用意して待っていますね。」

待っています…
その言葉が心に響きます。
それから片づけをして、送って行く事にしました。
帰る間の時間も一緒にいたかったからです。
たった10分ほどの道のりを、ふたりでゆっくりと歩きました。
とても幸せな時間ですね。
お店の前で沙羅さんと分かれました。
もちろん、「また明日」と言葉を添えて。
また明日の楽しみが増えてしまいました。

では明日も素敵な一日になりますように…
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